MIYAGI GATHERING

宮城教育大学にて、中学校技術科の先生方を対象に「計測・制御」をテーマとした研修会を開催!

平成26年2月16日(土)宮城教育大学安藤研究室との協動で、中学校技術科の先生を対象として「MIYAGI GATHERING」を開催しました。今回は、ラズベリーパイを活用した指導者研修会と、先生方とのトークセッションを実施。「ラズベリーパイを活用した、どんな授業ができる?」「プログラミングの授業で、生徒たちの評価はどうする?」など、現場を重ねている技術の先生ならではの視点での議論が生まれました。

日時
平成26年2月8日(土)13時~17時
会場
宮城教育大学
対象
宮城近隣の中学校の技術科教員
内容
プログラム:13時~16時 小型コンピューター「ラズベリーパイ」を使った計測・制御入門研修会/16時~17時 トークタイム「ラズベリーパイってどうですか?」

トークタイム!
「ラズベリーパイってどうですか?」

今回のGATHERINGイベントでは、実際にラズベリーパイとスクラッチの研修会を行ったあと、先生方とPEGを交えてのトークセッションを行いました。今回は、このときに出たいくつかの気になるトピックについてご紹介!

まずは、「もしラズベリーパイを学校に導入するなら!?」というテーマについて。4つのグループにわかれて、ラズベリーパイの学校での活用アイデアについて考えました。

学校での活用アイデアその1
被災地の学校での活用。
「「通常通り、コンピューターを購入するよりも安価で済むので、学校でラズベリーパイをコンピューターとして導入していきたい。それをこどもたちが家に持ち帰れば、家庭につき1台のコンピューターを持つこともできる。むき出しをいかして製品・技術の仕組みを学ぶ授業もつくってみたい。」
学校での活用アイデアその2
先生と生徒をつなぐツールづくり。
「先生と生徒のコミュニケーションのツールとして、何か使えないか。校門や教室の入口などに、今日の気持ちや気分を入力する装置を校門に置いて、出席管理もできるようなツールなどをつくってみたい。」
学校での活用アイデアその3
プログラムによる計測制御×他分野との連携!
「エネルギー変換であれば、何が動いているかを確認して動きのシミュレーションを行い、現実世界を結びつける。また、生物育成分野であれば、気温や日照などのデータロガーとして活用する。データを生徒同士でリアルタイムで公開し、場所などの条件による比較も行ってみたい。」
学校での活用アイデアその4
課題解決型授業のツールとして活用!
「課題自体を生徒に考えさせるのも面白いが、あえてひとつの課題を出題する。テーマな社会的なことでも、学校やクラス内のことでもいい。プログラミングによる課題解決のためのいろいろなルート・方法を考えさせるのがねらい。いろいろな解決方法があるよね、ということを伝えてみたい」

どの学校でも、「プログラミング」と聞くだけですぐに苦手意識を持ってしまう生徒がたくさんいるそう。セッションでは、アルゴリズムの基本やフローチャートからはじめる勉強ではなく、技術科であるからこその「つくる」ということに重点を置いた授業のあり方もあるのではないか?という視点で議論が白熱。「つくる」ためのモチベーションをつくる授業のアイデアがたくさん生まれました。授業案を考えたあとは、「評価」について。通知表を出し、生徒を一定の基準のもと評価しなければいけない先生方。「ひとりひとりの創造性や独創性を公平に評価することは難しい。」というある先生のひとことから議論が盛り上がりました。

生徒への「評価」はどうする!?

PEGの監修である阿部和広先生は、青山学院大学と津田塾大学で講師を務めているため、参加された先生方同様「評価」のあり方についてはいろいろと考えながら実践中。「わたしは大学で、学生同士に相互評価を行わせています。“もらった人を喜ばせる”というストーリーとゴールを授業で作り出し、最終的に生徒同士で投票・ポイントを付け合ったり、コメントしあったりするやり方を実践している」という阿部先生。CANVASで阿部先生と一緒に行うワークショップでも、よく相互評価を取り入れます。みんなで同じことをしたことで、他の人の工夫点やアイデアもよく実感できるのかとても盛り上がります。

他の先生からは、「“知識や理解を問う”ことと“独創性や個性、クリエイティビティ”をわけて評価をしたい。製作前に、ひとりひとりがコンセプトシート・プランニングシートを作成し、それに基づいた評価をしていく。でも、先生の負担が問題に。いくつかの教科との連携も必要かも?」という他の教科と連携することでより複合的な評価ができるのでは?という意見もありました。

「計測・制御のファン」
を先生の中にもっと増やしたい!

今回ご一緒した安藤先生は、もともと長い間中学校で活躍していた技術の先生。現在は大学で技術科の教員養成に携わりながら、様々な実践的な試みを続けています。そんな安藤先生に、今回のイベントを開催した思いについて伺いました。

ー今回のイベントを実施しようと思った理由やきっかけは何ですか?
「技術の先生方は、プログラミングに対して意外に不安感を持っている人も多いんです。まずは計測・制御のファンをラズベリーパイで増やすことができないか?と思いました。その一方、(計測・制御の授業をよりよくするために)もっといろいろやっていきたいと思っている先生たちも結構いる。そんなやる気のある先生たちをもっと伸ばしていきたい。最初の一歩を踏み出すための後押しができたらと思いました。」
「大抵、技術の先生は各学校でひとりずつ。代理の先生がいないから研修会にもなかなか行けないし、情報交換もできない。イベントをひらくことでつながりが生まれて、いざっていうときに声をかけて頼ることのできるきっかけもつくりたかった。」
ー安藤先生ご自身がこれから取り組んでいきたいことはありますか?
「プログラミング“で”学ぶとはなんなのか?についてもっと考えていきたい。論理的思考力、ってだけじゃだめ。そこをこれから研究や実践を重ねて、もっともっと言語化していかなければいけない。」
「あとは、今いる大学という構造やつながりも使いながら、教育自体の仕組み部分まで考えるレイヤーまでいけたら。現場と仕組みの部分をつなげていきたい。」

PEGのプロジェクトがはじまった当初、WEBサイト等を見て「待ってました!」と思ってくれたという安藤先生(!)。子供から大人までの幅広い対象や、良い意味での参加のハードルの低さ、オープンなイベントを開催できそうなところに魅力を感じていただいたそう。実際に、イベントには宮城県内各地からたくさんの先生方が集まり、研修会後のトークセッションまで多くの先生方にご参加いただきました。

「授業について情報共有・交換できる仕組みや場所がほしい」という参加された先生方の声がやはり多く、今回のイベントがそのひとつのきっかけとなり、PEGとして、その関係が継続的なものとなるようなフォローの仕組みも整えていかなければと実感しました。これからも毎日こどもたちと過ごす先生方との連携・協動を重ねながら、「学校」という現場でのより良いプログラミング学習のあり方とは何なのか、考えられる場を提供し続けたいと思います。

安藤先生が学生とともに開発した電子黒板アプリ「iTouch」。宮城県内の小学校の先生と連携をしながら、「大型ディスプレイだけど電子黒板として使いたい!」という先生の声を形にしたツール。

おわりに

PEG初めての、中学校の先生方を対象としたGATHERINGイベント。先生ならではのラズベリーパイへの視点は、勉強をさせていただくことが非常に多く、「こどもたちへ継続的な学習環境を届けていく」というPEGの活動にとても刺激になりました。今回のMIYAGI GATHERINGのあとも、いくつかの先生方との連携が続いています。ラズベリーパイをさっそく導入する予定の先生も!今後、宮城でのGATHERINGイベント第二弾の実施も予定しています。宮城でのプログラミング学習の盛り上がりにこれからもご注目ください!

  • 今日のテーマは「ラズベリーパイによる計測・制御」。
    ラズベリーパイを中学校の技術・家庭科の授業に導入することを想定した研修会です。

  • 基板むき出しのラズベリーパイを箱から取り出し、じっくり観察。

  • ラズベリーパイの起動に必要なものは、実は身近なものばかり。
    モニターさえあれば、周辺機材が安価に手に入るのもラズベリーパイの魅了のひとつです。

  • 全員が起動に成功!
    数十台のモニターがラズベリーパイマークに染まるのは毎度圧巻です。

  • まずはこども向けプログラミング言語「スクラッチ」の基本から。

  • 画面上の仮想センサーをつけたアリをコース通りに動かす「アリシミュレーター」を作成中。
    技術の授業では、車をコース通りに動かすライントレースという題材がよく扱われますが、
    スクラッチでも行うことができます。

  • いよいよ、ラズベリーパイのGPIOを活用した計測・制御の実習です。
    LEDの点灯・点滅制御をスクラッチから行います。

  • みなさん、真剣にラズベリーパイに向き合っています。

  • 抵抗・ジャンパワイヤー・わに口クリップ・LEDと、机の上がいっぱいに。

  • 様々なブロックでの命令を試しています。

  • アルミテープを付けたダンボールとラズベリーパイをつなぎ、
    コントローラーのようにネコを動かしています。

  • ダンボールの開閉に合わせて、ネコがいろいろな動きをします。

  • 今回ご一緒に研修会を開催した、宮城教育大学の安藤先生。
    ラズベリーパイの、開かれた計測・制御の教材としての魅力をお話いただきました。

  • 研修会終了後、参加いただいた先生方との座談会。
    「ラズベリーパイ」についてぶっちゃけトーク!

  • ラズベリーパイやスクラッチの技術的な質問から、授業づくりや評価についての質問、
    そして今の日本のプログラミング教育についてetc...、様々な質問・意見の生まれたセッションとなりました!

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